22才のときに、子宮がんの検査でひっかかったことがある。
その後、定期的に検査を受けていたが、ずっと無事だった。
当時は乳飲み子を抱えて、離婚したばかりだった。
おまけに父をがんで亡くしたばかりだった。
もう35年も前のことだ。
当時は、父のように苦しんで自分も死んでしまうのかと大きな不安に襲われたが、乳飲み子を抱えた私は簡単に諦めるわけにはいかなかった。がんに関する本を読み漁った。
当時は、今のようにネット社会ではないから、情報や知識は本だったのだ。
本はいろんなことを教えてくれた。病気の知識はもちろんのこと、健康な状態とはどうあるべきか、社会はどのように変化してきたのか、社会生活がどのように病気をもたらしてしまうのか。あの頃はまだ不治の病でもあった。父は癌と告知されず、自分の病気のことを周りに尋ねることもなく、痛みに苦しみ、ときにはロープにくくりつけられ、最後は全身が癌に侵され、モルヒネ漬け状態になって、亡くなったのだ。
若かった私は、人生とは何か、人としてどうあるべきか。純粋に、真剣に、考えた。
定期的に癌の検診を受けていくうちに、癌に怯える生活が精神的にダメージを受けるのを感じていた。
そうしてがん検診を受けることはなくなった。
あのとき乳飲み子だった息子は35歳になり、結婚して子供がふたりいる。未婚で出産した娘はもうじき20才だ。私は57才になった。人生を放り出したくなったこともあるけれど、二人の子供は立派に成長し、とても幸せだ。
そして、まったく気にもしていなかったのに、先月末、急に胸のしこりが大きくなっていることに気づいた。そうして、思い付いたように、市から届いていた特定検診の封を開けたのだ。
二つ下の妹は3年ほど前に乳がんを患っていた。
それなのに、自分が乳がんを患うなど、まったく考えたことがなかったのだ。

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